経験者が語る!オンラインでロボットを創るためのノウハウ ~Discord編~

新型コロナウィルスの感染拡大に伴い、オンラインでのロボット開発を進めているロボットコンテストチームも多くなっているのではないでしょうか?オンラインだけでのロボット開発は、なかなか部室でみんなが集まって進めるように円滑に進まないことを実感しているチームもいるかもしれません。

次世代ロボットエンジニア支援機構ではオンラインでのロボットコンテストチームの運営、ロボット開発のノウハウを公開しています!第一弾は本機構Scrambleに所属し、40名以上の学生が遠隔地(オンライン)で活動しているRoboMasterチームの副キャプテンを務めていたGasutaによる、オンラインでロボットを創るためのノウハウの紹介です。

 

Gasuta プロフィール

Scramble-RoboMasterチーム副キャプテン(2019年9月~2020年3月)

大手電機メーカに勤めるエンジニア。学生時代は奈良高専でアイデア対決・全国高等専門学校ロボットコンテスト(高専ロボコン)に参加。高専ロボコン史上初となる近畿地区高専からの全国優勝を果たし、また高専ロボコン最大の栄誉とされるロボコン大賞を同時受賞した(2015年奈良高専Aチーム「大和」回路設計製作担当)。高専ロボコン引退後は2017年よりRoboCupSSLに参加、2019年9月から翌年3月までScrambleのRoboMasterチームの副キャプテンに就任、就職後は要職から離れチームアドバイザを務めている。

 

Discord編前書き

前回のSlack編では、オンラインでのロボット創りのために日々どうやって情報をうまく共有するかのノウハウを紹介しました。今回のDiscord編では、チームでの日々の対話、雑談、ミーティングなどを円滑に進めるためのノウハウを紹介します!Discordの基本的な使い方については様々なページで紹介されていますのでそちらも併せて見てください。もちろん、前回と同じくオンラインの開発でなくとも、Discordなどのツールを上手く使いこなすことができると開発スピードをグッと上げることができますよ~!

 

そもそもDiscordとは?

Discordはアメリカ発のビデオ・音声通話やチャットができるツールです。通話しながら複数の人がパソコンの画面やカメラ映像を配信して共有することも可能です。

Discordでは話題に応じて複数のボイスチャンネル(通話のための部屋)を作ることができ、そこに誰が入っているかが一目でわかることが最大の特徴です。

ゲーマー向けのツールとして開発されましたが気軽な通話ができるため、これも多くのロボットコンテストチームで使われ始めているようです。

Slack編の記事はコチラ

 

オンラインでロボットを創るノウハウ10箇条! ~Discord編~

ロボットを創るには日々チームメンバーと相談や情報共有をして、チームの現状や目指すべきところの認識を共有することが何よりも重要で、メンバーと相談・対話をしたり、チーム全員でミーティングをしたりしますよね。直接顔を合わせることが出来ないオンラインでのロボット創りではメンバーとの相談・対話の仕方、ミーティングの開き方にも工夫が必要です。ここではDiscordをより上手く使い、円滑にチームのメンバーと相談・対話やミーティングをするためのノウハウを見ていきましょう。

 

その1 コアタイムを導入してみよう!

ロボ君
ボイスチャンネル(VC)でみんなと話しながら作業したいけど誰もいない...。普段の部活動なら部室に行けばみんないて気軽に話せるのに...。
1日の中で全員が作業する時間(コアタイム)を決め、その時間はみんながVCに参加するようにしてみましょう。 VCだと相談しながらの作業がスムーズに出来ますし、全員で同じ時間に作業をすることで突然のトラブルにも対応しやすくなります。
Gasuta

ココがポイント

  • 部活動で部室に集まることができる時間は固定されているけど、オンラインでは作業時間を各自の裁量に委ねることでよりその人にとって作業しやすい環境にすることもできるよ。ただ、みんなが一同に集まり相談や雑談をする時間を作ることも大切だね。
  • 作業は静かな環境でしたいという人たちのために、会話をしなくても良い部屋を用意することで「喋らなくても良いから集まる」という体制を作ってみよう。
  • みんなが無理なく集まれる時間帯、コアタイムの長さに設定することが重要です!

 

その2 ステータスを活用しよう!

ロボ君
みんなの話は聞きたいからボイスチャンネルには参加したいけど、自分に話を振って欲しくない(タスクに集中したいので聞き専でいたい)...。
Discordにはステータスという機能があります。 聞き専でVCに参加したい人はステータスに「取り込み中」を設定して、「取り込み中」の人には話しかけないという認識を共有しましょう。
Gasuta

ココがポイント

  • 一度ステータスを変更して、そのまま戻すのを忘れないように気をつけましょう。
  • カスタムステータスを使うことで、一定時間後に自動的にステータスを戻すこともできます。

 

その3 目的の決まってないボイスチャンネルがあってもいい!

ロボ君
ボイスチャンネルで話が盛り上がっているけど作業のことで聞きたいことがある。 大勢の話を遮って言い出すのは気が引けるな...。
ボイスチャンネルの部屋を複数作ってみましょう。名前をつけて複数のボイスチャンネルを作れるのはDiscordの特徴の一つです。 「〇〇について相談したいことがあるので××の部屋に来てもらえますか?」とメッセージを送って話を遮らずに誘導することが出来ますね。 Scramble-RoboMasterチームでは部屋1から5までの自由に使えるチャンネルがあり、作業内容ごとに2〜4人程度で集まって賑わっています。
Gasuta

ココがポイント

  • 用途ごとに分けることで、話したいテーマごとにボイスチャンネルに参加することができます。
  • チャンネルの増やしすぎには気を付けましょう。多すぎると人が分散して逆に会話が減ってしまうので、チームの人数やイン率などを見ながら調整すると良いでしょう。

 

その4 雑談も趣味の話もチームの中でできる体制を作ろう!

ロボ君
部室だともっとみんなと雑談もできていたけど、オンラインだとなかなかしにくい雰囲気があるなぁ...。もっとメンバ間での気軽に話せる場所を増やしたい...。
雑談や趣味のチャンネル作ることで、ミーティングやコアタイムの時間以外でも人が集まりやすくなり、交流の機会が増やすことができます。
Gasuta

ココがポイント

  • 堅い話題のチャンネルだけじゃなくて雑談専用のチャンネルを作ると気軽に話ができるようになるよ。
  • チャンネルを増やすとサイドバーがごちゃごちゃするのでカテゴリ機能を使って整理しよう。
  • チャンネルやカテゴリの並び替えはSlackとは違って手動でできるよ。趣味のチャンネルなどは下の方に配置して他の人の邪魔にならないようにしよう。

 

 

その5 オンラインで部室を作れ!

ロボ君
ボイスチャンネルをつないでみんなと作業していても、みんなが何をしてるのか見えなくて楽しくないなぁ。部室だとその人の近くに行くと何してるかすぐわかって、何をしているのか聞きたくもなるし、そういう雑談からいろんなアイデアも出てくるのに...。
カメラや画面共有を使って自分の作業の様子を配信してみましょう。 手元の作業を映すときはスマホのカメラ、作業風景全体を映したいときは三脚などに固定した定点カメラ、パソコンでの作業を共有したいときは画面共有と使い分けると良いでしょう。 配信中は部屋の外からも配信していることが分かるので、それを見て来てくれる人がいるかもしれません。 実際に作業を見てもらうことで間違いに早く気付けたり、雑談から新しいアイデアが生まれることもあります。 本当の部室みたいですね!
Gasuta

ココがポイント

  • Discordでは1つのボイスチャンネル内で複数の人が画面や動画を配信できて、どの画面や動画を見るかは自分で簡単に切り替えることができるよ。
  • 特にロボットの不具合を共有したいときには、カメラを使った配信が非常に効果的!
  • 作業画面を映す場合には、ウインドウ単体の共有だとエラーのポップアップなどが見れないので、画面全体の共有を使うとわかりやすいね。
  • 複数のロボコンを掛け持ちしている人は他のロボットがカメラに映らないよう気をつけよう。

 

 

DiscordとSkypeなどのボイスチャットツールとの違い

みなさんの多くは通話ツールにSkypeを使ったことがあるのではないでしょうか。オンラインでミーティングや相談・対話をするときもSkypeでもいいのでは?と思う方もいるかもしれませんが、Discordをうまく使いこなせばより気軽にメンバーに参加してもらうことができます!

Discordの最も良いところは、通話に入る前にそのボイスチャンネルに誰がいるかをぱっと確認できることです。今誰がいるか全くわからない通話に入るのってなかなか勇気がいりますよね。でもDiscordならそれが見るだけでわかります。あの人と話したいからあのチャンネルに入ろう、あのチャンネルは人が多いから別のチャンネルに入って話そう、みたいに選ぶこともできますね。

 

その6 ミーティングの議題は事前に共有すべし!

ロボ君
ミーティングがいつも長引いちゃう。全員が集まれる時間は限られてるからできるだけ手短に終わらせたい...。
必要以上に長いミーティングはかえって大事な内容が伝わりにくくなる危険性があります。 予めSlackなどのチャットツールで議題を共有し、同時に現状報告などは済ませてしまうことで実際の会議で話す内容を重要なものに絞ることができます。
Gasuta

ココがポイント

  • 議題の投稿に返信する形で具体的な現状報告などを繋げると綺麗にまとめられるよ。
  • 全員が予め議題に目を通せるよう、議題のある人は会議開始の1時間前までには共有しておくのが望ましいよ。

 

その7 オンラインだからこそスマートに議事録を取ろう!

ロボ君
この前のミーティングの議事録、自分が話してた重要な情報が抜けている気がする...。ミーティング中に議事録の中身が分かれば補足を書けるのになぁ...。
Googleドキュメントなどのオンラインで共同編集できるツールで議事録を取ってみよう。そうするとみんなの前でホワイトボードに書いているみたいに、ミーティング参加者全員に議事録の中身をリアルタイムに共有できます。
Gasuta

ココがポイント

  • Googleドキュメントは同時編集に対応しており、環境にも依存せず共有しやすいのでおすすめです!
  • 出席者のうち1人以上を議事録担当として会議の最初に指名し、どのような議論をしたのか記録してもらおう。必ずミーティングを進行する人以外が担当しよう。進行役が議事録まで担当するのは負担になり、記入漏れなどのミスの原因になるよ。

 

その8 ミーティングでの資料共有は別チャンネルで!

ロボ君
ボイスチャットを使えない人はテキストメッセージでミーティングに参加しているけど、最初に共有した資料がどんどん流れていく...。
ミーティング用チャンネルを、資料共有用とテキストでの会話用で分けると、見たい資料が流れてしまう心配がなくなります。
Gasuta

ココがポイント

  • ・資料の共有はダウンロードが必要な生データではなく、URLで共有できるものだとすぐに確認しやすいです。(Googleドキュメントやwikiのページ、GoogleDriveのリンクなど)
  • 会議の最初に議事録の保存先URLを資料チャンネルで共有すると、途中から参加した人も会議の流れがすぐに分かりますね。
  • チャンネル分けに正解はありません。これ以外にも各チームのメンバからフィードバックを貰い、適宜調整していきましょう。Scrambleのサーバーも日々進化しています!

 

 

その9 ミーティング時は顔より画面を映せ!

ロボ君
資料を事前に共有してもらって話を聞いていたけど、ちょっと気を抜いたら今どこを話してるのか分からなくなっちゃった...。
ScrambleのRoboMasterチームのミーティングでは基本的にカメラは使わず、代わりに画面共有が積極的に行われています。 読みながらの方が良い資料があるときは、議題ごとに話す人が画面共有をしながら進行すると良いでしょう。 複雑な議題の場合は、予めスライドを作っておくとよりスムーズに進行できますね。
Gasuta

ココがポイント

  • その場で画面共有をするつもりでも資料の事前共有はしよう!通信環境に余裕がなく、必ず共有された画面や動画を見れない人もいるので、議題と同じく必要な資料やスライドも事前に共有しておくようにしよう。
  • 画面共有は必ずしも必要ではないよ。簡単な連絡事項しかないミーティングの場合には、画面共有をしない方が時間を有効的に使えるかもしれないよ。

 

 

その10 オンラインミーティングの勘所をつかもう!

ロボ君
顔が見えないミーティングだと誰が話そうとしているのか分からなくて、話を遮ってしまったり、逆に譲り合いになってまうことがある...。
Discordでは喋っている人のアイコンが強調表示されるのでそれに注意を払うように心がけましょう。 また自分が話さないときにはマイクはミュートにして、ミュートを外す=話したいことがある、というような認識を共有しましょう。
Gasuta

ココがポイント

  • 話さない時にマイクをミュートにすることは、ハウリングの防止にもなるよ。
  • マイクを使えない人がチャットで発言することがあるので、ボイスチャンネルだけで盛り上がりすぎず、チャットにも意識を配ることを忘れないようにしよう。
  • オンラインでの会議は出席者の表情が見えにくいため、つい長時間続けてしまいがち!反省会など長引く会議の場合は一定時間ごとに休憩を挟むようにしよう(Scramble-RoboMasterチームでは50分ごとに10分の休憩をとっているよ)。

 

まとめ

チームでロボット開発を進めるには日々の雑談も含めた相談・対話や、メンバー同士の認識を合わせたり情報共有するミーティングの実施が重要ですよね。是非Discordを上手く使ってオンラインでも部室にいるときと同じように、むしろそれ以上に気兼ねなく意見を出し合ったり雑談ができたり、効果的なミーティングができるようにしてみてください。もちろんこのDiscordの使い方やミーティングの仕方もチームによって他にもっと良いやり方やノウハウもあると思うので、是非皆さんでいろんな情報を元にチームにとって一番良いやり方を見つけてくださいね!

来週は「オンラインでロボットを創るためのノウハウ ~情報管理編~」を公開予定です。お楽しみに!

2020年7月9日

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